熊谷早智子著『母を棄ててもいいですか?』
ショッキングな題名だが、サブタイトルには「支配する母親、縛られる娘」とあるように、母‐娘関係の問題を解き明かしてくれる本だ。
子どもが可愛くない親なんていない、と思いたいけれど、そんな綺麗事ですまされない親子関係がある。著者の熊谷さんは夫からのDVで離婚したあと、自分が母親に愛されていなかったという事実に気付く。「
モラル・ハラスメント被害者同盟」をネット上に立ち上げ、DV被害だけでなく、母親からのモラルハラスメントにあっていた多くの体験者の声を聴いてきた。
親に意地悪を言われる。認めてもらえない。兄弟姉妹と差別される。極端に躾がきびしい。お小遣いをくれない。…
親からの支配は教育・養育・躾という名目のもと、プライベートな空間である家庭で、幼少時から行われるので、その異常さに子ども自身が気づくことが難しい。
私自身は母親に支配されたという記憶はあまりなく、幸いなことにいま自分の娘を支配しているとも思わない。
しかし、「親」をやってみると、子どもを支配しかねない、思わず支配してしまいそうになる、そんな瞬間がいっぱいある。誰だってモラハラ親、毒親になりかねない怖さがある。
筆者は様々なケースを紹介しているのだが、読んでみて感じたことは、子どもを支配する「母たち」が結局は自分自身を生きられていない、自尊感情が低く、自分自身を愛せていなかったように見えたこと。母だから、女性だから、という枠の中に押しこめられ、自己不全感を抱えて生きていたために、だれか自分より弱いものを支配しないではいられなかったように思えた。
夫であれ、親であれ、自分にとって不幸せしか運んでこない人は、棄ててもいいんだよ。筆者のメッセージが伝わってくる。
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